カテゴリ:最近の蝶事情( 3 )

最近、カラスアゲハ族(Achilides)の分類に変更があったようなのでまとめておきます。これで落ち着いてくれればいいなと思いますが、分類学なんて暫定的なものでしかないと聞いたことがありますのでこれも今だけかもしれません。

■ミヤマカラスアゲハ(北海道~屋久島)Papilio maakii
■カラスアゲハ(北海道、本州、四国、九州(トカラのものは別亜種)、伊豆諸島(八丈のものは別亜種)Papilio dehaanii
■オキナワカラスアゲハ(奄美群島(別亜種)、沖縄諸島(基亜種))Papilio okinawaensis
■ヤエヤマカラスアゲハ(石垣~与那国)Papilio bianor

亜種の部分を読み飛ばせば、日本には4種のカラスアゲハ族がいることになります。ミヤマを除く3種は地域種郡でしょうか。
国外ではミヤマカラスが大陸北中部に分布していて、P. bianorが台湾~インドシナに分布しています。そして後者も「カラスアゲハ」と呼ぶので日本のP. dehaaniiと区別するのがややこしい。海外のものをヤエヤマカラスと呼ぶには抵抗があるし。いっそ暫定的にビアノールカラスアゲハとでも読んでおくしかないかな。


台湾のP. bianor(亜種タカサゴカラスアゲハ)

ラオスのP. bianor
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先週、SPINDA25号の編集が終わった。
編集長を中心によく頑張ってくれたので例年より早い仕上がりとなった。

おそらく4月の2週目にはお披露目記事をかけるのではと思う。

さて、SPINDA読者の方はご存じかと思うが、SPINDAの巻末には「日本産蝶類情報」という記録集が付いており、99年の復刊以来12年間続く長寿コーナーとなっている。これを見れば会員が一年間どこにいたかが手に取るように分かるシロモノである。(こっそり出かけてもここに載せればバレる)

この採集記録、僕たち執筆者あるいは出版する側としては「日本の蝶の公式な記録」となる情報・データと蓄積のために掲載している。例えばSPINDA24号のホシミスジの項にはこんな記録が載っている。

ホシミスジ Neptis pryeri
多数確認 5月24日 京都府京都市左京区*** (伏字)

つまり記録を出した者は「5月24日に***でホシミスジがたくさん見られた」という情報を蓄積の目的で発表している。

記録というのは各々がこうした目的を持って発表し、蓄積されたものである。SPINDAの場合は1年ごとの蓄積となる。
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図のように蝶を採集・目撃した人から情報が寄せられる。(右2つの記録は架空のもの。nllとはゼロを表す。つまりこの記録では5月26日に北区ではこの蝶は見つかっていないことになる。)

しかし、SPINDAを購読しこれを利用する場合、どんな目的でこの記録を見るだろうか。僕なら、採集・撮影に行く際の参考情報とすることが多い。その際知りたいのはポイント(場所)と発生時期(鮮度)である。つまり最もその蝶が見られそうな場所と時期が知りたいわけである。上の図の採集記録・情報を見た読者の中にはこの蝶を見に行きたいと思う人もいるはずである。ではこの3つの記録を見てどこに行くかというと、アクセスの条件を除けば記録が多いところに行きたくなるのではないだろうか。中には趣向を凝らして「記録がないところを狙う人」もいるだろうから以下のような状況が生まれると予想できる。
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僕は記録内の採集個体・目撃個体数に比例して訪問者が多くなると考えている。こうして有名産地ができあがる。そしてこれまで足かせとなっていたアクセスの条件すら、年々改善されてきてしまっている。

つまり記録を出す者はそのリスクを常に意識しなければならない。

しかし記録の蓄積は少なからず科学への貢献である。訪問者の増加を恐れ、隠すことが目的がではないし、科学への貢献をやめてしまったら蝶趣味の醍醐味も半減する。すべての行為が密猟のような後ろ暗さを伴う趣味などやりたくない。

ではどうすればこの状況を打開できるのか。


もう一度上の図を見てほしい。確かに左京区(多数)に対して、右京区の1頭はポイントの厚みとして魅力に欠けるかもしれない。だが、この記録から左京区と右京区のポイントの差を読み取るのは早計である。右京区で1頭採集されたことはイコール「1頭しかいない」ではない。たくさん群れ飛ぶ中の1頭を採集した記録かもしれないし、10頭いるところに10人の蝶屋が来て1人あたりの採り分が1頭となるような有名産地なのかもしれない。実際、後者のような産地は存在する。これまでの記録の出し方ではこれを判じることができない。もちろん、1頭という数字しか記録に出さないことで、その後の採集者の集中を避けているかもしれないが、その採集者は代わりに左京区のポイントに押し寄せそうである。記録の出し方を考え直せば何かが変わるかもしれない。

先に、記録の要素は詰まるところ「場所(ポイントの規模)と発生時期」だと書いた。これを正確に記述する方法を僕は1つ考えている。しかし日本の蝶を取り巻く状況はこれを実験的に行うにはあまりに危険なので、後続の採集者が集中する恐れの少ない海外の蝶について実行するつもりである。
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最近、月刊むしのバックナンバーをあさっている。

 虫屋が実践する保全に関するシリーズや、採集に関する法令ガイドが掲載された号を優先的に買っている。

 近年、(特に人気のある)昆虫を取り巻く状況は変化している。虫屋が逮捕された事件が起こっている。法令・条例の改定を知らなければ、気がつけば法を犯していたということにもなりかねない。


 はっきり言えば、僕は虫採りくらいは自由にやりたいと思っている。昆虫も漁業権のように適切な管理のもとで続けることを提案する人もいるが、漁業と昆虫採集では採る目的が違う。食べることを目的とした川虫の採集は漁業権の取得が必要になっている地域もある。しかし趣味の世界で標本作成目的とした採集の場合、異常型その他価値の高い記録など標本が必要なこともある。これが制限されるのは望ましくない。

 標本を作る目的は「記録」あるいは「証拠」を残すことである。「○○で△△を目撃」という証言は残念ながら公的な記録とはなりにくい。よほど鮮明な写真が残っていれば別だが、軽微な異常型などの場合、詳細な写真でもなければ判別が困難なこともある。そしてそのような写真を撮るには採集する必要があることもある(その後リリースするにしても、採集という行為が認められなければ記録を残すことができなくなる)。標本はその証拠として、あるいは今後の比較を含めて貴重な資料となりうる。外見では区別のできない遺伝レベルであれば撮影では記録を残すことは難しい。

 もちろん、必要以上に採集することは戒めるべきだと思う。しかしこの線引きが難しく、いまが個人の裁量に任せているわけである。一方で法令・条例で取り締まる動きも出ている。しかしその動きは足並みがそろわず、検討しなおす方がよいのでは?と思うものもある。また、行政区によって対応が異なる場合、規制のゆるい方への負荷が大きくなることも考慮されていない。

 無用な嫌疑・トラブルを避ける上でも規制の最新の情報を知っておくことはその地にでかける際に必ず必要だと思う。
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