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ノコギリクワガタ属雑記

ネブトを書いたついでに手元にあるノコギリを書いてみようと思う。
まず、日本のノコギリクワガタ属Prosopocoilusは3種類ということになっている。
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左:ハチジョウノコギリクワガタP. hachjoensis、中:ノコギリクワガタP. inclinatus、右:アマミノコギリクワガタP. dissimilis

ハチジョウノコギリの大歯型があったらよかんだが。。
主に書くのは次の2種。

ノコギリP. inclinatus京都市産
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一番見慣れた種。今住んでいる場所では最も身近なクワガタ。

これが九州南部でいくつかの亜種に別れ、これらの保護を目的として三島村で昆虫採集が禁止になったのは記憶に新しい。そして2009年、伊豆諸島南部亜種P. i. miyakejimaensis(阿達2009)が記載された。これは新島・式根島・神津島・三宅島の個体群である。
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ともに新島産

新島の標本が手元にある。(早く展足したい。。)これは街灯の下で採れたもの。この日は3♂1♀が得られている。普通の街灯で採れたので個体数は多いのかもしれない。miyakejimaensisの特徴は大歯型なら「大腮が太く、短く湾曲する」、原歯型なら「小歯が少なく不明瞭」だという。そこまで小さい原歯型は得られなかったので検証のしようはないが、大歯型の大腮や前胸背側縁の特徴は私の標本とも合致する。
同じ遠征で得られた伊豆大島産の標本がこれ。本土と同じくP. i. inclinatus
ということになる。小型の原歯型で、確かに小歯が明瞭である。
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アマミノコギリP. dissimilis 奄美大島産
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トカラ以南の原名亜種。大型になる。個人的にはこの大腮の鋸歯が好き。

この亜種で有名なのはトカラ列島産P. d. tokaraensisで、こちらも十島村での採集が禁止されたので、飼育されたものしか所持していない。
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美しさでは日本産クワガタムシの中でも上位に入ると思う。トカラの島間でも変異があるらしい。種群の中では体サイズは小さいほう。同じサイズの奄美大島産P. d. dissimilis と比べると、このサイズでも奄美産は中歯型である。
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藤田(2009)は伊平屋島からP. d. hayashiiを記載している。南西諸島のクワガタは奥が深い。

阿達直樹, 2009, 伊豆諸島産ノコギリクワガタの1新亜種の記載, むし(463)34-37.
藤田 宏, 2009, 沖縄県伊平屋島におけるアマミノコギリクワガタの1新亜種, むし(463)38-39.